2008年4月24日木曜日

天国を撮りにいった男

今日は仕事で川崎へ行った帰りに、新宿へ寄り道。ニコンサロンでやっている友人・内野雅文君の写真展「車窓から」を見てきました。



内野君のことはご存じの方も多いかもしれませんが、今年の元旦未明(つまり年明け直後)に京都・八坂神社で心筋梗塞により倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。モノクロフィルムを詰めた3台(EOS-1Vとヘキサー、ヘキサーRF)に、デジタル一眼レフのEOS 5D、計4台のカメラを提げて年越しの行事を撮影中だったそうです。駆けつけた救急隊に名前と年齢、そして「胸が痛い」と話したそうですが、2台のレンズが割れていたそうなので、本人も予期せぬ状態だったんでしょう。



内野君は僕と同じ年で、撮っているテーマもなんとなく似ていて(実力はだいぶ差……もちろん僕がずっと下……がありますが)、そのせいか使っている機材も奇妙なほど一致していて、実際に会うことは少なかったんですが、何かにつけてメールのやりとりをしていました。昨年には作品を撮るため京都へ引っ越し。ブログに日々作品をアップし、ようやく写真に彼らしさが見えてきたなぁ……と思っていた矢先でした。
もっとも僕が彼の死を知ったのは先月のこと。北京から帰ってくると、差出人が「内野君なんちゃら会」という封書が届いていました。「ほうほう、京都で嫁はん見つけおったか」とてっきり結婚パーティーの案内かと思ったんですが、中身はお別れの会だったわけです。
今回の「車窓から」は昨年(つまり生前)から決まっており、本人は展示への序文まで書き上げていました(意外と段取りのいいやつだったことが判明)。プリントはご両親や友人の方たちが仕上げたそうです。
まあなんてカッコよすぎる死に様だ!と少し嫉妬も覚えますが、彼のことだから今頃はのほほーんと天国を撮っていることでしょう。あ、でもあいつカメラ忘れていったよな。天国にも中古カメラ屋ってあるんだろうか。いや買えるなら新品の方がいいと思うけど。



しかし友人が亡くなるというのもショックだし、同い年なのに病で倒れるというのもショックだし、それにも増して日本の写真史に名を残すかもしれない写真家がわずか34歳で逝ってしまうということがショックでした。あと20年30年この世で撮り続けていたら、すごい作品を残したはずなのになぁ……いや、すでに素晴らしい作品を遺してくれています。
風貌も人柄ものほほーんとした内野君でしたが、写真家としては太く短い人生でした。



ちなみに会場には立派な追悼集が置いてあり、友人知人はもちろんのこと、写真界のそうそうたる顔ぶれが追悼文を寄せておられました。僕の知人も結構いて、まさか内野と知り合いだったとは……と思いましたが、よく考えたら彼は僕よりも写真界で顔が広いんですよね。
その追悼集では、さまざまな方が「訃報を聞いた後、1月1日消印の年賀状が届いた」話を書いておられました。どうやら八坂神社へ向かう途中で投函したようですが、泣かせるエピソードじゃないですか。そういえばオレにも必ず年賀状を送ってくれてたよなぁと思い、たったいま年賀状の束を洗い直したのですが……来とらん!と違う意味で(涙)。

おい内野よ、天国にフジヤカメラやヨドバシカメラはないかもしれんが、郵便局くらいはあるだろう。はよ年賀状寄越せ。




080423_0046 ほれ、天国へ花を贈ったるわい■IXY DIGITAL 20IS