2泊3日、南アルプス・白峰三山の縦走より無事帰還しました…というのは昨日の話。一旦東京に戻ったものの、急遽身延町で撮影が入ったため、今日再び山梨へリターン。明日明後日は早川町で写真集用の撮影があるので、明日泊まるはずだった旅館に、一日早くチェックインして、今日自宅で仕上げるはずだった原稿を書いたり。
3000m級の峰々をひたすら歩き通す縦走は、人生で最高に苦しい体験でした。途中で862回くらい「二度とここには来るまい」と思いました。でも時間が経つたびに稜線からの眺めや、日常では味わえないスリルを思い出し、もう一度行ってもいいかな…と思い始める始末。
今回の縦走の目的は、出発前に書いた通り、再来年の早川町写真集の撮影のため。間ノ岳と農鳥岳のそれぞれ山頂から東側が早川町なのです。というわけで縦走2日目、日本で2番目に高い北岳を下って、3番目に高い間ノ岳に辿り着くあたりから本格的に撮影開始。北岳では視界を遮っていた霧がそのあたりから消え、雲海の上に稜線が浮かぶようになりました。おかげで撮影も進み、マミヤ6MFでフィルムを12本か13本くらい。あとはフジのX30でもちょこちょこ。
何より収穫だったのは、一番の目的だった農鳥小屋の名物主人・タダシさんをじっくりたっぷり撮れたこと。登山愛好家なら恐らく知らない人はいないタダシさんですが、ネット上には「おっかない」「怒られた」というエピソードと、「いい人だった」というエピソードがあり、どっちがホントやねんという感じですが、きっとおっかなくていい人なのだろうと思ったら、やはりそんな感じでした。僕が滞在している間は終始ご機嫌でしたが。
今回撮影したフィルムの半分以上は、そんなタダシさんのポートレート。50年以上も標高2800mの山小屋を守ってきた主は、やはり絵になるんです。最初は「フィルムで撮ってるのか。一枚一枚大切に撮らないといけないから大変だな」と感心していたタダシさんも、次第に「おい、そんなに撮ってフィルムがもったいないだろ」と呆れる始末。でもタダシさんを撮るためにここまで来たんで…と言ったら、「そうか。じゃあ俺が死んだら黒枠付きで使わせてくれよ。正面を向いてないやつで頼むぞ」と苦笑い。
■FUJIFILM X30
西農鳥岳を背景に“定位置”で佇むタダシさん。ここから正面の間ノ岳を眺めているのですが…「ほら、あそこに2人いるだろ?」と言われても僕には何も見えず。最初は疑っていたのですが、その後本当に2人連れが。僕が驚いていると「俺には全部見えるんだよ。あのへんで君は初老の男性とすれ違いざまに立ち話をしただろ?」。ハイ、立ち話していました…。視力は4.0で、でもまだまだ足りないそうです。視力検査では0.1の輪もまったく見えない僕には、何とも想像できません。
タダシさん以外にもいろいろな思い出の残った縦走ですが、当然ひとりで行けるはずもなく、同行してくれた上流研(早川町観光協会)の鞍打さんと加藤くんに感謝。そして人を無理矢理誘っておきながら、勝手に白峰三山よりはるかに高い天国へ行ってしまった日本出版ネットワークの藤田さんにも。はいシカノはちゃんと登ってきましたよ。昨日下山したときは脚がただの棒でしたが、今日は全然平気。筋肉痛もほとんどナシです。