2016年10月17日月曜日

見せる阿呆に見る阿呆

今日は新宿のepSITEで写真展のプリント後半戦。一日かかってA1を26枚プリント。これで展示作品すべてが揃いました。といいたいんだけど、飾れる枚数より多いのでこれからふるい落とし。W杯に例えると「現地合宿まで参加しながら、本戦メンバーに選ばれず、魂をフランスに置いてきた三浦カズ」のようなプリントが数枚発生してしまう計算です。プリントとしては弱いんだけど、写真としてはアリなんだよなぁ…とか、逆に写真は凡庸なんだけどプリントがきれいだったりとか。そのへんをどう組むか。難しいんですよねぇ。

作業が終わって西口の繁華街を歩いていたら、奥さまと赤ちゃんを連れた某同業者氏に遭遇。「ピントが合わない」という理由でライカのレンズを新しいタイプへ買い替えていました。凡夫はああいう行為って家族に隠れてやるんですけどね(笑)。っていうかその旧式でいいから欲しいんだけどなぁ。底を開けるとフィルムが入るライカなら買えないこともないけど、写真展貧乏なのでSDカードが入るライカは夢のまた夢ですわ。

まあこういう話はどうでもいいというか、しない方が粋なのかもしれませんが、プリント代、額装代、DMの印刷代、郵送代、アレ代、コレ代、カニ代、とにかく写真展にはすごい金額がかかります。いやカニは買いませんよ、これから旨い季節ですが。
それらを主催者が負担し、さらにギャラを支払ってくれることもある企画展もありますが、大半は作家がハコ代を払うことで実現しています。今回の僕はその中間というか、公募によって新宿の一等地の広くて、きれいで、専任の社員さんもいるギャラリーを2週間も無料でお借りすることができました。それだけで十分得なわけですが、何か対価が得られるわけでもなく、むしろハコが立派なぶん裏ではそれなりにお金がかかります。小さなライブハウスならギター一本だけでライブできるけれど、長渕剛が同じようにギター一本で東京ドームに現れても、その裏では膨大な人数のスタッフが動くわけですヨーソロー。

それでもなぜ写真展をやるのかといえば、実績こそが最大の営業という立場上、こういうことをしていないと自分の5年後、10年後がない(かもしれない)というのもあるけれど、一番の理由は「自分の写真を見る」ということなんです。てめえで撮った写真をてめえで見ねえのかよ、と言われそうですが、必要がなかったら真剣には見ないものですよ。見ている時間は長いとしてもね。

その点写真展をやれば、否が応でも自分の写真を正面から見つめ続けます。もはや格闘。会場に在廊した日には、偉い方から見知らぬ方まで多くのご指導ご鞭撻を賜り、体重が一気に5kgくらい減る勢いです。というわけで痩せたい方は写真展をどうぞ。
まあ痩せたくないという方でも、ちょっとでも表現として写真に取り組んでいるのなら、猫の額みたいなギャラリーでも近所の喫茶店でもいいから、展示をしてほしいと思います。有償無償これだけ開かれた展示空間がある国は、世界広しといえども日本くらいですから(たぶん)。そんな話をすると「私はそういうレベルじゃないし」という方がいらっしゃいますが、そういうレベルじゃないから自分から挑戦するんですよ。見せる阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら見せなきゃ損々。

とプリントが終わった解放感で、ずっと飲みかけだった焼酎を煽ったら筆が滑ってしまいました。おやすみなさい。



■HASSELBLAD 500C/M+CF80mmF2.8+FUJICOLOR PRO400